これはエンターテイメントなのだろうか?観ている時も終わった後も胸に去来するのは、喜びでも悲しみでもなく、まるで現実のように割り切れない切なさ。
ここ最近で一番良かった映画。映像の素晴らしさとディストピア感がストライクで、グイーッと作品に引きずり込まれる感じ。
監督はクリストファー・ノーラン。同監督作で初めて観たのは「インセプション」で度肝をぬかれた。やっぱり世界観の作り込みがすごい。169分という長丁場ながら、ラストまで気持ちが切れなかった。
作品情報
- 公開/2014年11月7日
- 製作国/アメリカ合衆国・イギリス
- 監督/クリストファー・ノーラン
- 出演者/マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン
あらすじ
地球の寿命は尽きかけていた。居住可能な新たな惑星を探すという人類の限界を超えたミッションに選ばれたのは、まだ幼い子供を持つ元エンジニアの男。
彼を待っていたのは、未だかつて誰も見たことがない、衝撃の宇宙。はたして彼は人類の存続をかけたミッションを成し遂げることが出来るのか?引用:インターステラー 公式
ポイント
「時間」そして「宇宙」の絶対性
緩やかで諦めに満ちた世界の終わりや果てない宇宙の映像表現など。インセプションでも見せたイマジネーションに満ちた、息を飲むような美しさ。
特に後半は宇宙シーンがメインになり、より壮大な映像も増えるのだが⋯ここで「時間」の恐ろしさが顔を出す。宇宙へ旅立った人たち、地球に残された人たちの視点で進むのだが⋯これがあまりにも切ない。
地球を救うため宇宙に旅立つ主人公、そこに立ちはだかる「ウラシマ効果」。宇宙の1時間が地球時間で7年⋯残された子どもたちは、主人公よりも歳を重ね⋯。
この「時間に取り残される孤独」と「宇宙の圧倒的な美しさ」の残酷と絶対性に、悲しいやら感動やらで⋯頭がパニック。
宇宙という「未知」を描くイマジネーションの世界
前人未踏の宇宙を「宇宙はこうなのかー」と思ってしまうほどリアル。そのバックボーンとなっているのが、科学的面の監修をした理論物理学者キップ・ソーンの存在。
SFにありがちなトンデモ理論ではなく、ノーベル物理学賞を受賞する「本物」がサポート。随所に見られる科学的な説明は説得力があり「他の銀河⋯行けちゃうんじゃない?」感がすごい。
そして理屈だけでなくクリストファー・ノーラン監督の映像化がすごい。個人的に監督の映像表現が、宇宙というモチーフとハマりすぎている。
映像だけでも楽しめるほど、しっかりとした作り込まれた作品⋯なんだけど、内容も面白いというのがこの映画のスゴさ。
マーフィーの法則、そして伏線回収
劇中にでてくる主人公クーパーの娘につけられた名前であり、「起こりうることは、起こる」という経験則のジョーク的なもの。
ただ、この作品においてはジョークではなく、内容そのものを表している重要な言葉であり、ストーリーの伏線にもなっている。
旅のなかで多くの困難に見舞われるクーパーだったが、彼は決して諦めることはなかった。それにより彼はラスト、想像を超える「ある事象」に巻き込まれる。
それは作品に散りばめられた伏線の答え、まさに「起こりうることは、起こる」そのもの。伏線とも思わなかった何気ないシーンも伏線になっていて⋯ラスト付近は終始「あっ⋯あー!!」ってなっていた。
こんなに手の込んだ映画、よく作れるな⋯。
まとめ
ガッツリ本格SFと思いきや、ヒューマンドラマを織り交ぜた家族愛の物語。
こんなに映画の世界にのめり込んだのは、去年見た「新感染」以来。そちらも素晴らしい映像と「生きたい・生きてほしい」という純粋な願い。やっぱりシンプルな動機にこそ、心を動かされる力強さがある。
私が心に残ったのは「時間もリソース」という言葉。時間という平等で、変えがたいもの。それがいかに大事かと教えてくれる教訓的な映画。
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