全世界で累計販売840万本の大ヒットゲーム「サイレントヒル」を実写化した映画。
私はゲームを未プレイで再現度はわからないが、ホラー・サスペンス映画として良作。
閉鎖的な田舎でゴーストタウン、さらに隠蔽された過去。「うわー、絶対閉じ込められて、やばいヤツ出てくるじゃんー」というダーク・ファンタジー鉄板の組み合わせ。
緊迫感がとぎれないタイプの作品だが、気持ちの休憩ポイントはあるので、すんなり観られる。(グロ・痛い描写はPG-12なので、わりとおさえめ)
作品情報
- 公開/2006年4月21日
- 製作国/カナダ・フランス
- 監督/クリストフ・ガンズ
- 出演者/ラダ・ミッチェル、ジョデル・フェルランド、ショーン・ビーン
あらすじ
最愛の娘・シャロンが、悪夢にうなされて叫ぶ「サイレントヒル…」という奇妙な言葉。
母親のローズはその謎を解くため、シャロンを連れてウェストバージニア州に実在する街・サイレントヒルを訪ねる。
だが、ひと気もなく、深い霧に覆われたその街は、一度足を踏み入れると抜け出すことのできない、呪われた迷宮だった。
引用:サイレントヒル 公式
おすすめポイント
「霧」という圧迫感と恐怖
サイレントヒルの代名詞「深い霧」。視野をうばわれることで「ありもしない何か」を想像してしまい、じわりとした恐怖がまとわりつく。
深い霧を体験したことがあると、この映画は印象がだいぶ変わってくる。
深い霧という非日常
私は大学生のころ、車の峠越えで濃霧を経験した。視界のすべてが霧で覆われ、ほんの数メートル先も見えない。そして霧の中から、対向車がいきなり現れる。
車でさえこの緊張感なのに、それがサイレントヒルのように、霧からクリーチャーが出てくるとしたら⋯心が耐えれそうにない。
(下のツイートにある「日勝峠」で濃霧にやられた。ふつうに「ヤバい⋯」くらいの語彙力になった。1年中、霧の影響があるリアルサイレントヒル。)
日勝峠霧で前見えない… pic.twitter.com/oB4id90rCv
— てらしぃ@そー(出張で琵琶湖) (@tera283_so2001) 2016年8月16日
2つの視点から見る謎
はじまりは30年前、サイレントヒルでの坑道火災。それが主人公たちと、サイレントヒルをつなぐカギ。(ちなみにサイレントヒルには、モデルになったセントラリアという町がある)
その謎を「霧の世界・現実世界」2つの視点から、真実へとすすんでいく。
キャラの視点で、楽しむとき & 考えるときがわかりやすいので、作品に集中しやすい。
世界によるパート分け
- ローズ:行動ターン
- 夫クリス:推理ターン ※心の休憩ポイント
霧の世界
主人公であるローズと娘シャロンがいる「霧の世界」。いつもは深い霧と灰つつまれたゴーストタウン。
冒頭にシャロンとはぐれてしまい、ローズは霧のなかでサイレントヒルを探索することに。そこで不思議な少女の姿を見かける⋯。
霧の世界(異界)
サイレンが鳴り響き、霧の世界すべてが暗闇になる〈裏世界〉。まわりは血痕と錆に改変され、異形のクリーチャーたちが徘徊する。
悪夢という言葉がふさわしい世界。クリーチャーたちは人間たちに対し、強力な殺意をもって襲いかかってくる。その姿は統一性もなく、まさに「異形」といえる。
現実世界
ローズの夫であるクリスがいる「現実世界」。同じサイレントヒルでも、霧もなければ〈裏世界〉もない。
同じ部屋などにいても、お互いを認識することができない。夫クリスだけは、まれに「気配らしきもの」を感じるが⋯。
ラストシーンの考察(ネタバレ)
この映画を見た人は、頭を悩ませるラストシーン。
無事にサイレントヒルから脱出、自宅に戻ることのできたローズたち。しかし同じ場所にいるはずの夫クリスと再会することができない⋯。
なぜローズは戻れないのか
キーは「霧の世界」を生み出しているアレッサ。ラストでローズが「霧の世界」にいるということは、確実にアレッサが関係している。
しかし、アレッサはローズに対して敵対心はないはず。(ローズが妄信的な信徒に殺されそうなとき、アレッサが助けるシーンがある)
「何かしらの理由」でローズは、霧の世界(アレッサ)から出られずにいる。
考えられる答え
シャロンを助けるため捨て身になるローズを見て、アレッサは彼女を「求めるべき親(神)」と認めた。
アレッサはシャロンと同化、体を乗っとる(元に戻った、というべき?)。ローズはそれに気づかず、霧の世界に囚われることになる。
ラストシーンにつながる情報はさりげなく、見落としやすい。しかし情報を照らしあわせると、矛盾なく答えを導くことができる。
ラストにおける伏線
- シャロンと同化を思わせるシーン
- ラストシーンにセリフが一切ない
- ダリアに対する視線
- 赤子のように指をくわえる
- 「現実世界」夫クリスがいるソファを見る
1. シャロンと同化を思わせるシーン
アレッサはあるシーンを境に、姿を見せなくなる。
アレッサによる復讐のスキに、ローズはシャロンを助けだす。2人は物陰に隠れ、ローズはシャロンの視界を手でおおい「目を閉じて」と。しかしシャロンは指のスキマから、つい目を開けてしまう。そこにはシャロンをのぞき込むアレッサが⋯。
→ 目覚めるとアレッサの姿はなかった。シャロンはすでにアレッサと同化。
2. ラストシーンにセリフが一切ない
シャロンは大人しいが、けして無口ではない。
いきなり異常な世界に迷い込み、母親とはぐれてしまう。それがやっと母親と再開し、家に帰ることができる。それなのに、ひと言もしゃべろうとはしない。
→ もとめた母親も手に入れ、復讐も終わった、語るべきことはない。
3. ダリアに対する視線
ほとんど面識のない人物に「侮蔑」の視線?
誰もいなくなった教会から出ていくとき、アレッサの母親(シャロンの生母でもある)ダリアに、シャロンは軽蔑のような表情をする。一時的であれ保護してくれた人物におくる視線とは思えない。
→ すでにアレッサになっている。そしてダリアからローズへ親(神)は移動しているため。
4. 赤子のように指をくわえる
冒頭と対比するようなシーン構成、そこに見える違和感。
事件も終わり、自宅に帰るために車に向かう2人。はしゃぐように走るシャロンは、車の後部座席に乗りこみ横たわる。そしてローズをじっと見つめて、指をくわえ眠りにつく。
→ 行きでは指をくわえる描写はない。愛に飢えたアレッサの感情がしぐさに出ている。
5. 「現実世界」夫クリスがいるソファを見る
「霧の世界」にいるシャロンに、むこう側は見えないはず⋯。
夫クリスは同じリビングいるが「現実世界」のため、ローズは認識できない。しかしシャロンはあきらかに「見えている」ように、クリスがいるソファを鋭い目線で追っている。
→「霧の世界」を生み出しているアレッサは、おそらく「現実世界」を観測できる。夫クリスへの視線が厳しいのは、アレッサに必要なのはローズ(母親)だけだから。
まとめ
「霧につつまれたゴーストタウン」という独特な世界。CGも違和感を感じさせないほどクオリティが高い。
シーンの映像表現も美しく、なかでもラストの教会シーンは秀逸。キャラごとの感情がうずまく、残酷で幻想的なシーン。
ちょっと残念だったのは、ストーリーがすんなり進みすぎたこと。せっかくのクリーチャーもほぼ置きものだし、もう少しアグレッシブに使ってもよかった。
あとシャロン役のジョデル・フェルランド、天使みたいにかわいい。
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