この印象的な表紙なので、見たことがあるかもしれません。「GANTZ」の奥浩哉さんによる、58歳のサラリーマンのヒーロー。
「生きる」ということが希薄な現代。生きているということがなんなのか。それを独自の切り口で表現しています。
漫画だけでなく、アニメや映画にもなった人気作品ですね。
この作品には暴力描写やグロテスクなシーンがあります。
作品情報
- 著者/奥浩哉
- 掲載誌/イブニング
- 既刊/全10巻(完結)
あらすじ
定年間近の冴えないサラリーマン、犬屋敷 壱郎(いぬやしき いちろう)。
家族からも疎ましがられ、さらには健康診断の再検査で末期ガンだと宣告される。それを家族にも言えず、傷心のまま夜の街をさまよう。そしてたどり着いた公園で、死の恐怖に声を上げ涙にくれていた。
その時「ある事故」に巻き込まれてしまう。
その事故によって、犬屋敷は人知を超えた力を手に入れ、さらに末期ガンもなくなっていた。・・・だがそれは人の心を持ったまま、「人ではない何か」になるということだった。
そしてそれは、偶然にも同じ場所で事故に巻き込まれた高校生獅子神 皓(ししかみ ひろ)もだった。
同じ力を持ちながら、年も性格も全く違う2人。その「人ではない」という事実を突きつけられた時、彼らはそれぞれの道を歩みはじめた・・・。
おすすめポイント
犬屋敷 壱郎らしさ
正義感が強いが、穏やかな性格。
彼は手に入れた力を使い、火事や事故などから人々を助ける。そのたび救われた人々の喜びに「よかった・・・嬉しい・・・」と涙を流します。
時には理不尽な暴力にも立ち向かいます。言葉に耳を貸さない悪意でも、怒ることはあっても力に溺れず、誰も殺すことない。自分の信念を見失わない。
そんな彼だからこそ、暗くなりがちなこの作品の光になっています。
名もなき群衆たち
街中の野次馬、ネットの書き込み・・・そんな外野たちが何度となく描かれます。彼らは何をするわけでもなく、ただ無責任に残酷な言葉や態度を示します。
それを登場人物たちはどう感じ、どうやって人々と関わっていくのか。この作品の1つのキーポイントです。
「生きている」という皮肉
犬屋敷は人でなくなってからの方が、より生き生きとしていきます。獅子神も生きている時にはなかった、生への執着というのを非常に強く見せます。
生を失ったからこそ、その価値を深く知っている。だからこそ強く「人でありたい」と思う気持ちがある。それがより鮮明に「人間らしさ」を浮かび上がらせている。
「生きていない」からこそ、「生きていたい」と必死になるという皮肉ですね。
まとめ
この作品の中でスマートに物事が解決されることはありません。リアルと同じように混沌として、問題が複雑に絡み合った世界です。
その中で犬屋敷壱郎が見せる姿は、とても不器用だけど真っ直ぐで誠実です。自分にできることはないかと、諦めずに探し続けます。
特に犬屋敷が娘の麻理を助けにいくところは、涙が止まりませんでした・・・。ぜひ犬屋敷 壱郎の生き様をご覧ください!
コメントを残す